県南地域退院支援について
当医師会は高齢の皆様の在宅医療介護の手段としての、ICTでの情報共有促進で活動して参りましたが、その過程で、「情報の本質」についての理解が進むにつれ、「医療情報」と「介護情報」は「質」が違う別物であり、今まで「壁」があると感じていたのはそこに原因があることに気がつきました。
即ち、「医療情報」は殆ど一方向に流れるだけのものですが、「介護情報」は双方向へ流すのが基本であり、その更新頻度も前者は数回/年ですむのに、後者は日々更新が必要で、閲覧者は前者が医師か看護師だけで、後者はそれこそ多職種の人達といった具合です。
また、前者の情報保護度は高く、後者はそれほどでもない、といくらでも違いが浮かびます。
つまり、これらを一緒にしたICT医療介護情報共有システムでは、まさに「水と油」が一緒だったの
ですから、うまく機能するわけがなかったのです。
ここで、個人の医療介護情報が「一番必要とされる場面」と、「情報の切れ間」になるところはどこかという視点に立つと、どちらも患者さんの「入退院」での緊急移動時である事はすぐわかります。
ですので、まずはこの部分だけの情報のやりとりが円滑になっただけで(たとえ、アナログでも)、最終目的だった「ICT情報共有システム」機能(デジタル)の80%くらいはカバーできるのではないかと考えたわけです。
そこに、この地区の県南保健所(中心は平野さん)からの声かけがあり、この地域の在宅医療介護関係者(医師会、歯科医師会、介護福祉会、行政担当者、ケアマネ、訪問看護師、地域連携室、行政など)が一堂に会しての「県南地域退院支援ルールガイドライン」作りに参加することになったのです。
皆さんの熱意と平野さんのがんばりで、平成28年2月に、県内では最初となる地域版としての「退院支援ルール」が完成しました(福島県版は4月までにできる予定ですが、上位版としてではなく、地域版が優先の中の、参考資料という位置づけになります)。
もちろん、これが他に比べてベストという意味ではなく、「地域の特性」を考えての、全関係者間の合意に基づいた「ルール作り」であったことが評価できるかと存じます。
勿論、本当の評価はこれを運用してからの実証に待つものです。
まずは、誰でも参加できる仕組み(基本は紙媒体の情報移動)ですので、その第一歩を踏み出しましょう。 関係者の皆様が実用されてのご意見をお待ちしております。
会長 星 竹敏
■県南地域退院支援ルールはこちらから
在宅医療について当医師会では、全国に先駆けた在宅医療への取組みとして、ITを全面的に取り入れた情報連携システムの構築を進めております。
■塙厚生病院 在宅医療連携拠点構想図
■情報共有システムの概念図
■まとめ- 地域の在宅医療介護の要は「支援する人」が、その被介護者の周囲に充分にいるかどうかである
- 支援できる家族人数の復活はあり得ないので、赤の他人を「準知人」化して支援人数を増やすしかない(→社会全体で個人の終末期を支える唯一の方法)
- 「準知人」化とは「医療介護情報を共有できる」、即ち「その人を知っている」状態にすることと同じである
- その情報共有の手段は、現代では「電子媒体情報端末」を持つことで得られやすい(→必ずしも絶対ではない)
→手段は最新でも、目的は「人々の助けあい」の環境を整備なので、古くからの農村にあった社会に戻るだけである(新時代的医療介護を目指すのではなく、復古的医療介護社会の再構築を目指すという考え方である) |